PJ: 今藤 泰資
混沌と秩序の入れ混じる国・中国へ行く(3)
2009年07月07日 07:06 JST
道路という道路にクルマがあふれ、歩道のあるなしにかかわらず徒歩の人もいる。混沌とした光景はやはり中国的。(上海市内6月26日撮影:今藤泰資) 
【PJニュース 2009年7月7日】上海浦東国際機場に出迎え以降、3日間ガイドをつとめてくれたのは憑祥雲(ヒョウ・ショウウン)さん。髪は長髪、和服を着せたらまるで横溝正史作品の主人公・金田一耕助。風采(ふうさい)の上がらないこの人物、意外なことに「ワタシの本職は画家」と自己紹介。幼少より絵才があり、上海工芸美術学校卒業後、シルクの絵柄を描く仕事に従事。88年5月より2年間日本へ留学したという七夕生まれの49歳。日本で学んだ理由は「日本へ美術留学をした中国人芸術家が多数いた。そしてまた現在、伝統的な中国画を革新し独自の作風を確立するため」。画の観光ガイドとは、さすがの股旅(またたび)男の私も驚いたが、書の達人でもあるらしく、見事に書かれた文字で、現代中国の簡体字(jiantizi)の解説などをしてくれた。今まで意味不明であった「京?高速」が、北京と上海を結ぶ高速道路のことと知った。「サンズイヘンに戸」の文字は、上海を意味する簡体字。クルマのナンバープレートもこの一文字で上海籍だとすぐわかる。
スピードの速いインフラ整備はこの国の特徴。「五縦七横」(南北に5本、東西に7本)をスローガンとする「中国国家高速公路網」60,300kmを中国は10年で成し遂げた。さらに2020年までに総距離は10万キロに達する見込みとされる。ちなみにわが国の高速道路の総延長は約9,000キロ。比較するのも気が引ける。高速道路の街路樹はネムノキ、ネズミモチ、キョウチクトウが多い。木々は花のシーズを迎えたばかりだが、整然と立ち並ぶ木立は見るのに飽きる。紀元前5世紀ごろにはすでに郊外の道路に並木があり、秦(しん)の始皇帝は街道に松を並木として植えたという。唐・長安の都は、ヤナギ・モモ・エンジュ・ニレが街路樹として植栽されていたというから、中国における街路樹の歴史は古い。
道路を走るクルマ圧倒的には中型セダンが多い。タクシーにいたっては、フォルクスワーゲンのサンタナばかり。当地の上海大衆汽車会社が長年ライセンス生産を続けているからだろう。高級車の間を縫うように走るのが、電動自転車。その数の多さには圧倒される。そこで憑さんの案内は、「これが中国名物の49CC車」。50CC以上は「道路交通安全法」によってクルマと規定されているが、それ以下は自転車扱い。年1回の車検もなければ、免許も不要。日本に輸入されている「ポケットバイク」というより、自転車を改造しただけに見える代物だ。時速は30キロ前後、3000元(約4万2000円)程度で購入できるから庶民の足として急速に普及したらしい。危険きわまりないこの電動自転車、規制の網をくぐる中国得意のカオスとわたしは見たが、どうだろう。
一党独裁国家にあっては、思想も行動も「統一」が重んじられる。都市景観においても、それが顕著に見られ、北京でも上海でも目に付く光景は見事に整備された高層ビルに高速道路、手入れの行き届いた公園や博物館や美術館である。ただし、背後に廃墟(はいきょ)と化した古い民家が取り残され空地も少なくない。なんせこの国の全土は国家が所有しているのだ、文句のつけようもない。訴訟をおこしても勝ち目はないから「あきらめ」が肝心という次第。成田国際空港のちゃらんぽらんな整備状態は「民主主義国家の悪しき弊害」ということになる。統一は分散か、とどちらも一長一短がある。
帰国の朝、上海国際機場で得がたい経験をした。この旅は往復ともに中国国際航空機を利用。成田空港での扱いはコードシエアの全日空。さほど気にも留(と)めなかったが、上海のチェックインは最悪最低。若い男命令口調で手荷物を取り扱う。立腹したわたしは「早朝だから眠いのか、家でけんかでもしてきたのか」と英語で一喝。
「what?!」と目をむくその男の次は若い女性の出国管理官。こちらは、これでもかというほど丁寧。わたしは気づかなかったが、同行した友人は「サービスの点数を決めるボタンがあったから、Aを押した」そうだ。このサービスは明らかに上海万博を意識してのこと。民間航空機のサービスが粗暴で、最もチェックの厳しい出入国管理官が笑顔で送迎する…。この記事を執筆中、新疆ウイグル自治区で暴動が起こったと外電は報じる。建国60周年の節目の年になる中華人民共和国は「悠久の歴史を誇る」中国ではまだまだ未熟な体制国家。カオスとコスモスが入れ乱れてもムリはあるまいと思ったものだ。【了】
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