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PJ: 今藤 泰資

大韓民国の「陰」と「陽」(上)=日差しが強ければ、日陰はいやまして暗くなる=
2009年06月21日 09:46 JST


ソウル中心部の忠武路(チュンムロ)に立つ韓国の国民的英雄・李舜臣(イ・スンシン)の像。李将軍は1592年から始まった文禄・慶長の役の当時、朝鮮水軍を率いて日本軍との戦いに活躍した人物。後方には韓国大統領官邸「青瓦台(チョンワデ)」が見える。(撮影:今藤泰資) 

【PJニュース 2009年6月21日】今月初旬の数日、首都ソウル市と忠清北道の清州市を旅したわたしは、今回も奇妙な隣国の風習に驚き、穏やかな人々の機微に触れ心が和んだ。年に数回訪問することもあるこの国は、そのつどわたしの気持ちを昂揚(こうよう)させてきた。異国で日本を振り返る習慣は、長年身についたわたしの生き方の一つであり、わけても盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の自殺後、政治的混乱が続く韓国を訪問したのは、隣国以上に政治的混乱の引き続くわが国を客観的に見つめたかったにほかならない。思った以上の成果があったと感じるこの旅で、わたしは際立った韓国の陰と陽を見ることになった。陰と陽とは、わが国でいう日本人の伝統的な世界観「ハレとケ」ではない。「光と影」に近い表現だが、それで陰陽の奥深さは説明できない。

通称太極旗(テグッキ)と呼ばれる大韓民国の国旗。白地の中央にある円「太極」の中に赤青の2色からなる「陰陽」があり、四隅に配置されているのは「卦」と呼ぶ。「陰陽」は古代中国に端を発し、森羅万象あらゆる事物をさまざまな観点から陰陽二極に分類する発想だ。「卦」は風水とかかわり深い組み合わせとされる。大韓民国建国の翌49年10月、国家のシンボルとなった大極旗は、儒教精神と風水神話が根強く残る隣国を端的に象徴している。現李政権に至るまでの60数年間、この国では幾多の危機的状況を乗り越えてきた。長いようで短い大韓民国の歴史には、「陽」よりも「陰」の部分が少なくない。しかも死生観なのか恥を嫌う国民性なのか、歴史を開陳する政治家も思想家も従来は欠落しているところに、隣国の陰陽が際立って見えてくる。

過去にPJニュース記事にもした建国直後の「済州島四三事件」は、ある韓国人から「日本人なのによく知っている」と驚かれたことがある。わたしはその言葉を「知ってほしくない史実」という意味に理解した。それに続く「麗水・順天(ヨス・スンチョン)事件」は民族相克史であり、1950年の「老斤里(ノグンリ)事件」(ちなみに事件をテーマにした「朝鮮の虐殺―20世紀の野蛮から訣別するための現場報告書」の著者はオーマイニュースの社長呉連鎬氏である)はアメリカ陸軍による韓国人大虐殺事件であった。1968年に起こった「青瓦台(チョワデ)襲撃事件」は「実尾島(シルミド)事件」に敷衍(ふえん)し、「映画シルミド」によって当時の軍政の恥部が暴かれた。2004年のこれも韓国映画の「大統領の理髪師」は、大統領官邸近くの孔子洞(ヒョジャドン)に住む平凡な理髪師ソン・ハンモ一家の悲喜劇を見事に描いた秀作である。これによって、1979年10月の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺事件という「陰」に属する重いテーマを「陽」に表現したのは任昌丁(イム・チャンサン)監督であった。

韓国史上最大の汚点である8万人もの殺戮の歴史・「四三事件」を、国家的見地から鮮明にした故盧武鉉前大統領。済州島民に謝罪し、名誉を回復させた前大統領。同じ第16代大統領であったリンカーンに憧(あこが)れながら、反米反日の旗印を掲げた政治家であったが、彼は韓国の「陰」を「陽」に見事に転じたのである。だがその彼・盧武鉉氏が、ユストゥスという洗礼名を持つ敬虔(けいけん)なカトリック教徒であったにも関わらず、「召されて昇天するというキリストの教えに逸脱した」との指摘はない。自死によって「陰」の家に篭(こ)もった事実を、韓国キリスト教会はどのように解釈したのだろうか。

大統領選挙を支えた陽性なネチズンは、彼の死をどのように考えているのか。知人の政治学者・姜瑩基(カン・ヒョンキ)忠北大学教授は、わたしの質問に「彼は死ぬほどのことはなかった」とし、「清廉潔白を身をもって実践したのでは」とのみ応えた。「陰」でも「陽」でもない世界に出かけたと解釈すればいいのか、わたしはすっかり迷ってしまった。前大統領の死は、以前この記事にした。確かなことは民主主義指導者の死によって、韓国政界と財界の癒着の構図が、またもや暗闇に消えうせたことだけだ。【つづく】 (今藤泰資・茨城県)

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