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PJ: 今藤 泰資

イオン土浦の挑戦=変貌する大型商業施設の方向を探る(下)
2009年04月22日 05:17 JST


「苦渋の決断ですよ」と困惑した表情の中にも笑みがこぼれるのが、土浦商工会議所の専務理事菅澤秀男さんだ(撮影:今藤泰資) 

(上)からのつづき。土浦市と土浦商工会議所が推し進める「カレーのまちづくり」は、2004年度の重点施策として、推進協議会の発足以降、「ツエッペリンカレー」と「予科練カレー」として人気を博してきた。1829年(昭和4年)、ドイツから飛来したツエッペリン伯号は、「当時、世界大恐慌を吹き飛ばすほどの勢いがあった」と語るのが堀越専務。連日の飛行船見物客は、「30万人を数え、常磐線には臨時列車も出た」あの勢いこそ、イオン土浦SCであり、「現代の飛行船こそイオンなんですよ」と喜ぶ。

 イオンSCのフードコーナー43坪に出店する加盟店は13社。厨房(ちゅうぼう)からカウンターなどの諸設備はすべてイオン負担、加盟店は販売金額に応じて15%前後を支払う仕組みだ。一方イオンからの要請は、事業協同組合の結成だけである。盛岡の遠野SCでも、「地場農産物販売を行政とタイアップしたことがある」井上さんも、「ここまでできたのは、やはり堀越さんの尽力」とし、「利益アップより、土浦に来たら土浦の食。地元の方には懐かしさを、来訪者には土浦の素晴らしさを味わっていただくツールがイオン土浦。単一化のシッピングセンターでは面白くないでしょ?」と地域密着型構想を吐露する。また一枚の鳥瞰(ちょうかん)図をPJに示し、「どうですか? この絵には、ツエッペリン伯号も、花火も、サクラも入っているでしょう」と自慢する。全国有数の水際、霞ケ浦湖岸220キロ、波崎から北茨城市に至る180キロの海岸線、坂東太郎こと利根川に代表される河岸などの「地域資産を粗末にしている茨城」をPJが話題にした時、井上さんの目がキラリと輝いた。「霞月楼の屋形船プロジェクトにも、ウチは一枚加わりまっせ」とすかさず返事をするのは、県内数店の店長経験のなせるワザ。地域商法の推進者の顔がチラリとのぞいた。

 一方、「イオン出店は苦渋の決断ですよ」と困惑の中にも笑みがこぼれるのが、土浦商工会議所の専務理事菅澤秀男さんだ。イオンの開業は、「2800人の雇用を創出する。街のイメージアップにもつながるが、既存市内の中小商業者の現状からは複雑」なのである。5月1日から会議所では、「ツエッペリン号飛来80周年記念」のプレミアム商品券を発売することにした。10%引きの商品券は、今年5月1日から9月末日までの間、市内旧商店街ばかりではなく、駅前再開発の中核施設であるイトーヨーカ堂土浦店や、JR荒川沖駅に隣接する「さんぱる」のスーパー、長崎屋などに加え、イオン土浦SCでも利用できるのが特徴だ。イトーヨーカ堂は、全国25都道府県に店舗を持つゼネラルマーチャンダイズストア(GMS)、セブン&アイ・ホールディングスの子会社であり中核企業だ。大規模商業施設から、店員1名の小売店までの意見を集約し、ルールを徹底するのは容易ではないが、「今さらイオン反対を叫ぶわけにもいかない」が本音なのだろう。

 「出店後がまた、大変なんですよ」と、課題の多さに頭を抱えるのが土浦市の商工観光課長の大里雅司さんだ。新年度の辞令により中心市街地活性化対策室長から昇格したばかりの大里さんは、対処する事案の多さに戸惑う。「カレーの店がうまく回転するのか」といい、「商店街がまた寂れるかも」「10月の花火大会当日、イオンは休店か時間営業しかない」──。市内の交通事情も、花火の火の粉も心配。手放しで喜べない新課長さんの悩みは深い。輪番制のカレーショップ運営に対する不安は、「食のまちつちうら協同組合」の設立発起人代表の堀越雄二さんとて同様だ。「本店と同じ味が出せるのか」とさめた意見も出る。「いや本店以上に旨かったら、本店が失格するかも」と心配する声もあれば、「最初から、人数の限られてる小規模店が、掛け持ち営業できるのか」とも聞いた。果てしない不安は小規模事業者ばかりではない。

 55万人とカウントした商圏内には市内のイトーヨーカ堂、つくばには西武百貨店とイオングループのジャスコがあり、イーアスつくばがある。今秋オープンを予定される「阿見アウトレット」は、GMSから見れば異業種だが、「GMS、スーパー、アウトレットの違いはない。みな同じ大型商業施設。子連れで歩くにはどこでも同じだ」という冷めた意見もある。自ら「この地区は間違いなくオーバーショップ」と認める井上和行さん。堀越雄二さんとの地域密着型コラボレーションは、春夏秋冬を過ごした来年5月、事の次第は明らかになるだろう。大商業資本対大手デベロッパーの戦ますます激化するに違いない。在来型小売店は、韓国型の雑多でわい雑な街頭販売に活路が見いだせるはず。大型商業施設対小売店の戦いは、ここからが本番なのである。【了】

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