PJ: 今藤 泰資
イオン土浦の挑戦=変貌する大型商業施設の方向を探る(上)
2009年04月21日 11:41 JST

「ジャスコ時代を含め、全国各地23カ所を転々と歩いた」というイオンSCの責任者井上和行さん(左)。「好漢です、井上さんは」と高く評価するのが地元の老舗料亭の専務堀越雄二さん。同世代で商業者として経験を重ねたご両人、接点を「いや、偶然の出会いだけ」と口を揃えるが…?(16日、土浦商工会議所で、撮影:今藤泰資) 
全国各地で大型商業施設の建設ラッシュが続いている。その一方、伝統的な商店街は後継者に悩み、不便な駐車場が嫌われ、価格競争にも品ぞろえにも敗れた。全国各地に「シャッター通り」が増えた理由だ。過去数十年、これらの商店街は、大店法(大規模小売店舗法)や、まちづくり3法(都市計画法、大店立地法、中心市街地活性化法)などによる規制によっては保護されてはきた。だが時の流れは、「在来型商店街 vs 大型商業施設」という単純構造から、微妙に変化している。今までは禁句であったはずの大規模商業施設建設さえ、各地の首長選挙の目玉として、「大型店誘致」を公約に掲げる候補者も出てきた。こうした中、今年5月末の開業を目指し、茨城県土浦市上高津に建設中の「イオン土浦ショッピングセンター(SC)」の開設責任者と土浦市の関係者らに取材、変ぼうする大型商業施設の方向を探ってみた。
イオン土浦SCは、国道6号バイパス沿いの敷地面積約15万8千平方メートル。鉄骨3階建て。商業施設面積は約8万平方メートル。ジャスコをキーテナントとする約160の専門店にシネマコンプレックスを併設。3260台収容の駐車場などを誇るが、それだけで差別を誇示することはムリなようだ。同社が強調する「ファミリー世代や団塊世代のライフスタイルに対応する」ことも、「価格」や「品質」にこだわることも、「環境に配慮したエコストアー」も決め手になりそうもない。経験豊富な大商業資本と競うのが、大手デベロッパーによる大型商業施設の開業だ。その多くはマンションを併設し、「住商一体」がコンセプトだ。中には宅配サービスによる利便性をアピールし、コンサートなどの催事で地域コミュニティーづくりに力を入れ差別化を図るものもあり、在来型の商業集積との差別化にけん命だ。
実はイオン土浦SC、昨年秋の開業を「周辺の商業環境に対応するため設計の変更に伴い、09年5月に延期」した経緯がある。土浦市の中川清市長が、「直営店とテナント部分の見直しに伴い設計変更を行い、今年3月末までに建築物の変更の実施設計を完了し、7月までには建築工事を再開する予定」と明らかにしたのは、昨年2月のこと。当時開店遅延の理由は明らかにされていなかったが、08年10月末にオープンしたダイワハウス工業の手になる大型複合商業施設「iias(イーアス)つくば」を意識したとするのが妥当だ。「イーアスつくば」は、核テナント10、モール専門店211の計221店舗を組み合わせた北関東最大級の大型複合商業施設。医療機関、銀行、カルチャー教室、結婚式場などを誘致。物販店舗の集合体としての大型商業施設ではなく、「一つの街としての機能を兼ね備える」と業界筋から地元消費者まで注目を浴びていたのだ。
一連の経緯を、イオン土浦SCの最高責任者井上和行さん(土浦SCモール開設委員長)は、「イーアスを対抗軸として見てはいない」と強調する。そこにはゼネラルマーチャンダイズストア(GMS)の雄としての矜持(きょうじ)がのぞく。さはさりとて、秋葉原からつくばエクスプレスで51分、沿線の東京、千葉には住宅建設が進む研究学園駅前という立地と広大な敷地は将来を見据えた場合、イオン土浦SC最大のライバルであることに間違いない。だからこその設計変更であり、開店時期の先延ばしではなかったか。開業後の「イーアスつくば」の週末はともかく、平日の店内には閑散とした風景が広がる。新設商業施設でも「開店直後はともかく、つくばの中心部のクレオなどに舞い戻った」と地元の主婦。消費者の目は厳しいのだ。平日の若年層を集める手だては、「郊外型店舗」には不向きの上、肝心のマンションに移住人口の少なさが不動産業界では話題になる。人口増加と市場の拡大は、プレハブメーカー系デベロッパーも、GMSと同様の悩みを抱えている。
後発効果を狙って開業を遅らせたイオン土浦SC。その目論みは正しかったのか。「ジャスコ時代を含め、全国各地23カ所を転々と歩いた」というイオンSCの責任者を「好漢ですよ、井上さんは」と高く評価するのが堀越雄二さんだ。地元土浦で120年の歴史を誇る老舗料亭の専務で、「つちうらカリー物語」で食のまちづくりに精を出す地元の雄でもある。なぜ旧来型の商業者が、大型商業資本と手を組んだのか。わが国を代表する大商業資本のイオンが、土浦のどこに魅力を感じ、どう動いたのか。同世代であり、いずれも商業者としての経験を重ねたご両人、接点を、「いや、偶然の出会いだっただけ」と口をそろえる。だが、立場こそ違え「地域密着型」の行動と発想がそこには見え隠れする。
「テナント募集では、現在の経済状況、後継者不足、資金問題などで、予定に達するのに骨を折った」という井上さん。だが、キーテナントを持たないデベロッパーのダイワハウスが、「イーアスつくば」にナショナルブランドから、地元商業者に至るまで、根こそぎ応募をかけた結果が、「骨を折った」原因だったようだ。さらに井上さんは、「土浦市とは貢献しあう部分が多い」とし、「花火でしょ、サクラでしょ、ツエッペリンでしょ。それがカレーに集約されて」と堀越さんの顔を見る。80年前、ドイツの飛行船ツエッペリン号が霞ケ浦に飛来した。「ツエッペリン伯爵を中心とする高級乗組員は、霞月楼で日本食に舌鼓を打ち、下級乗組員らは、地元のジャガイモを使ったカレーで接待した」とカレーの町土浦の歴史を堀越さんは解説する。好漢2人の出会いは、「テナント料無料」のご当地カレーコーナーとして、花開くことになったのだ。だが、井上さんが「さすがにイオンも初の試み」という異例の出店対策によって、土浦SCの特異性を維持、誇示できるのか。課題がまだまだ少なくはなさそうだが……。【つづく】
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