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PJ: 今藤 泰資

師走のソウル(2)すざましいウォン安と、脅威のBBクリーム
2008年12月26日 07:35 JST


ますます価値の下がるウォンだが、日本人観光客には、「ドッサと札束を切れる」貴重な存在だ。(撮影:今藤泰資) 

前夜零時近く、インチョン空港に到着したわたしを迎えてくれたのは、PJニュースhttp://news.livedoor.com/article/detail/2465307/でおなじみの大学生ナム・ミョンヒョン君(29)である。今春ぶらりとわが家に滞在して以来のナム君、観光ガイド風に「WELCOME TO KORIA IMAFUJI TAISUKE」と大書した紙片を示しながらの歓迎には驚いた。今回の宿は地下鉄ソウル西大門駅付近にあって、空港からリムジンバスが便利だと知っていたが、最終便が出た後、やむなくタクシーを利用することになった。

 タクシー乗り場にはやや胡散(うさん)臭い客引きが集まっていたが、比較的きれいな車両を選んで乗車。アジアのハブ空港を標榜(ひょうぼう)するインチョン空港とはいいながら、この時間はさすがに閑散としている。それにしてもこのタクシー、運転の乱暴なこと! 片側3車線と余裕があっても、160キロ超の速度のクルマに乗ったことなどない。ナム君に「このクルマ、早すぎるよね」と水を向けると、「運転手さんは、普通1時間かかるが、今夜は30分で行けると言っています」とのんきなものだ。高速料、深夜割り増しなどを含めて8万ウォンは高かったが、円安の昨今、60キロ近く走って7000円程度ならまあ仕方があるまい。ホテルにチェックインして時計を見たら、午前1時。1階のセブンイレブンで求めた缶ビールで、ナム君と深夜の乾杯して寝た。

 成田を出る時、1万円だけウォンに交換しておいた。現地より割高だろうと想像していたが、手持ちのウォンが少なかったためだ。成田空港での両替レートは1万円で12万9000ウォン。深夜のインチョン空港では14万1000ウォン。日本でのレートは想像以上に低く、不満が残った。3日の滞在中、ミョンドンや南大門の両替商と路傍で開業するおばあさんらに、両替レートを片っ端から聞いて回った。最高はある老婆の14万8000ウォン。最低は帰国当日、再度インチョン空港の銀行窓口での12万9000ウォン。今年3月、チェジュ(済州島)へ行った当時の1万円=8500ウォンに比較すると驚きの円高・ウォン安ということになるが、こうもいい加減な両替レートはどうにかすべきだ。

 ウォン安と円高に乗じて出掛けるのは、若者ばかりではない。ホテル1階ロビーでたむろしている中年の日本人主婦、「わたし、今日は100万使ったよ」などと豪語している。厚い札束を抱えて買い物に出掛ける気持ちは分からなくもない。万という単位のお札を100枚も使えかなりいい気分になるものだ。空港でも免税店でも両手に余るビニール袋の中身はそうたいしたものでもあるまい。ヨンさまヨンさまと騒いだオバちゃま方、最近のお目当てはなんと言っても「BBクリーム」なのである。

 わたしたち世代にとってのBBは、ブリジット・バルドーだったが、今どきの「BB」とは、Blemish Balmの略称。肌の鎮静、保護するための目的で開発されたクリームなのだ。元来は整形手術後に利用された特殊なクリームで、10万ウォン以上の高価で販売されてきたが、現在は1万ウォン前後にまで下がり、ブレーク中だという。日本で同等の商品が開発されないのは、化粧水、乳液、美容液、栄養クリーム、UVカット、ファンデーションなどの機能が1種類で済むという利便性が、資生堂やカネボウなどのトップメーカーの脅威になっているという説がある。日本で評判になったのは、オカマキャラ「美容界の話題を一心に集めている奇跡の美容家・IKKO」さんが紹介してかららしい。

 ソウル中心部にあるロッテ百貨店9階には、「BBクリーム」の専用コーナーがあり、現地価格は11ドル前後。日本国内では同等品が4000円−5000円程度というから人気は上々、100万ウォン払って100本持ち帰るオバちゃまがいてもおかしくない。1000円の土産でこれほど喜ばれる貴重品はあるまい。綾小路きみまろから「♪どんなに塗りたくっても、トシはトシ」と冷やかされそうだが、身近な愛用者から聞いた話では、あらゆる面で効果は抜群とべた褒めであった。まあ、安いパッケージツアーに紛れ込んだ挙げ句、早朝のキムチ店でうまくもない宮廷キムチとやらを、ドッサリ売りつけられるよりはましかも知れない。

 ソウルの歳末風景を彩るのが、救世軍の社会鍋だ。昨今、銀座に出る機会はめったにないが、「悩める者は来たれ、みな来たれ」とプカプカドンドンとにぎやかな音楽がクリスマス気分を盛り上げたものだ。当地では、「マネーカード」を使い、バスに設置されているカード端末機を設置し、初乗り運賃相当額の900ウォンを寄付する仕組みもあるとかで、盛況だった。この国ではキリスト教の普及率が高く、どのマチにでも教会の尖塔(せんとう)がそびえたっている。子ども時代育った兵庫県西宮の夙川にはカトリック教会があって、この季節には、ワルがきが神妙な顔をして教会の地下室に集まったものだ。韓国という国は、異質な文化を味わえる場所でありながら、いつ来ても郷愁をそそられることになる。【つづく】

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