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PJ: 今藤 泰資

深まる混迷と立ち遅れる対策=どうなる、ガソリンスタンド業界?
2008年12月12日 15:33 JST


目立つ価格表でも、実際には、その他にも「あるある価格」。(撮影:今藤泰資) 

ドル安、原油価格の急落、買い控えと省エネ車の普及などによる需要減。ガソリンスタンド業界を取り巻く経済環境は悪化の一途をたどっている。さらに事情を複雑にさせているのが、値下がりが続くガソリン価格と乱売合戦。だが、こうした悪循環のウラには、ガソリンスタンド(GS)業界全体が抱える自己矛盾がありそうだ。

 石油情報センター発表の「全国平均が120円を割った(12/8)」という相も変わらぬ大本営的発表とは異なり、高知市ではついにレギュラーガソリン92円のスタンドまで出現、同県内では激しい乱売合戦がくりひろげられているとFNNニュース(12/9)が伝えた。(ちなみに石油情報センター12/8発表の高知県平均価格は110.8円である)。乱売合戦の特徴は、値下げになっても需要が伸びないことであり、結局は業界自体の衰微を促進させているように見える。
 
 11月18日、業界の全国組織である全国石油商業組合連合会(全石連:会長関正夫氏)は、需要減や人口減などの経営難などにより、青森、長野、奈良など32都道府県153町村が、今後部分的に「スタンド過疎地化が促進される」と発表。同時にこれらの地域は山間地などにあり、これ以上減少すると暖房用灯油といった生活必需品の供給不安が生じると指摘し、「自治体や事業者が連携して、スタンド存続のための対策を検討するよう」求めている。

 その一因は、顧客が望まぬセルフ式スタンドの導入促進にある。今年6月末のセルフGSは7463カ所とセルフ率は16.4%となった一方、過当競争による淘汰・廃業・統合などの理由によって、セルフ撤退数も241カ所にのぼっている。建設コストが高い上、ランニングコストは当然人員削減であり、昨今の労働市場悪化を増幅させることは必至。単なるコストの削減は、経営者としての資質を問われることになりかねない。大資本を投入できない零細事業者は、ますます割高販売を続け、販売量と売上高の減少を招いている。こうした重厚長大型GS建設により販売コストが上昇することをなぜ業界全体のこととして把握し、対策を打たないのか。

 ついで、新設GSには実に余分なコストが掛かっている点を指摘しておきたい。この代表格が巨大キャノピー(天蓋:軽量機上部の屋根)の構築である。消防法上、さほどに高いキャノピーは要求されていない。なぜかと聞かれれば多くの業界関係者は声をそろえて「大型バスやダンプが入ってきても大丈夫なように」といった返事を戻す。20数年前、このことに疑念を抱いた私は、石油元売りの工務担当者に質問したが、理解に値する答えはなかった。おそらくは石油元売りの「設備にカネをかけさせ、異業種に進出の機会を奪う」たくらみだと、当時から思い続けている。夜間、人気のないガソリンスタンドの高いキャノピーから煌々(こうこう)と光輝くさまを見れば、「もったいない!」と声を上げたくなる。最近でこそ減ったが、真昼間に電灯を灯(とも)しっぱなしのGSを発見できるだろう。巨大なキャノピーなど不要なのだ。

 今一つは価格表示のあり方だ。かくも混乱が続く石油業界であってみれば、GS個々バラバラの価格の統一ぐらい、なぜできないのか疑問だ。あるところではレギュラー、軽油、ハイオク、あるところではハイオク、レギュラー。そこに灯油価格まで表示しようとするから利用者から見れば実に不親切。茨城県内の業界大手GSではサインポール上部に106円、下の立て看板には「ゴールド現金103円」とあり、さらに元売りカードならそこから2円引きだというが、もちろん101円の標識はない。さらに不可思議にも、この会社の発行したクレジットカードでは、数日前114円であった。私の指摘によって、同社では翌日価格修正を行ったが、「価格体系が複雑なのと、価格変化にカード価格の修正にまで追いつかない」のが現状という。同じ日、同じ市内の同じ会社の別のGSでは、126円、116円の看板が出ていた。ここではハイオク価格を先に表示し、またレギュラー価格は10円も違う。これで消費者は納得するだろうか。

 自由競争は決して悪くはない。その昔、公正取引委員会の摘発を受けた北海道の石油組合幹部の手帳には、対公取用に「トリのマーク」が記されていたという伝説的な(笑えない)笑い話がある。日常茶飯事だった談合がこの業界から消えうせたのは結構だが、利用者の困惑をかえりみず、好き勝手な看板と価格設定はやめるべきだろう。手間ヒマかけて誰からも喜ばれないシステムをいつまで続けるのか、この業界は…。

 全石連では全国140ヶ所に「災害対応型給油所」を設置。発電設備及び給水設備の設置により、災害時に電気、水道がストップした場合でも、給油や水の提供が可能なGSの普及に努め、登下校する子どもたちの「駆け込み場」としてガソリンスタンドの利活用を呼びかけている。地域に密着した取り組みを批判するものではないが、業界本来の存在理由は、石油製品の安定供給と標準的価格の維持にある。

 連日のように脱石油、CO2の節減、コンパクトカーの普及などに始まり、今朝の朝刊には東京工業大学と三菱商事の共同開発によって、アイフルホームでは「専用コンセント内臓:電気自動車対応の家」という広告があった。時代は変わったのだ。変わらぬ思いで乱売合戦を展開し、巨大構造物をステージとしたガソリン販売を繰り広げる時代ではあるまい。業界関係者の猛省を期待いたしたいところだ。【了】

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