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PJ: 今藤 泰資

メディアが書かない「ガソリン価格決定」のカラクリ(下)
2008年11月13日 08:35 JST


セルフは、想像以上にハイコスト。大型GSの建設費はすぐに億になる。(筑西市内9日撮影:今藤泰資) 

(上)からのつづき。「今回の仕切り価格は、RIMとTOCOMを基準とし、それらをミックスした価格で供給する」とI氏が困惑するのが、(仕入れ先である)新日石の新方式だという。なるほど複雑だ、業界通を自負するわたしでもわかりにくい。RIM価格とは主にガソリン、灯油、軽油の京浜、阪神地区のスポット市場の相場で、通常「業転価格」とされるものだ。TOCOMは、東京工業品取引所(The Tokyo Commodity Exchange) の略称である。石油自由化を背景に、平成11年7月にガソリン及び灯油、平成13年9月に原油、そして平成15年9月に軽油を上場。欧、米、アジアの三極を結ぶ国際水準の商品取引所として機能している。透明性を担保するための手法とはいえ、こうした基準値を理解するには、国際石油市場に精通していなければ不可能だ。つまり、140ドルにも高騰した原油が、70ドル前後まで下降する現状を掌握するのは困難だし、この仕切り体系には、末端市場への配慮もなければ、スケールメリットも出てこないことになる。

 一方、末端市場に混乱を生じさせるこの現状を、大手石油メーカーの元広報担当者K氏は、「現場を離れてますから、詳しい説明はできませんが」との前置きで次のように語った。「元売りの立場からは、透明性を高める意味においてこれ以外の選択肢はないのでしょう。ただ、末端のGSでは毎週仕切り価格が変更され、市況とのマッチングが難しいはず」とし、「資金調達力の乏しいGSでは、数か月後に行き詰まる可能性も…」と言葉を濁す。急下降した先物原油はリスクヘッジどころか、手かせ足かせとなって元売り会社に覆(お)いかぶさる。わが身にかかる火の粉は払わねばならない。安値で買いたい特約店の声があっても、「そうは問屋が卸さない」のである。

 従来、元売りでは、大小を問わずどの系列の特約店にも、市場にマッチした仕切り価格を提示し、期末に「市況対策費」などとして、仕切り価格の調整を行ってきた。「販売奨励金」という拡販に対する制度もあった。こうした「事後調整」がなくなった現在、「ウチのGSは今日現在、儲(もう)かってるのか、損してるのか、わからない」ことになる。新価格体系で契約した特約店が、もしTOCOMの100%連動方式を選択したとすれば、「弱小特約店でも仕切り価格は広域ディーラー並みになる」とする意見(新日石系垣見油化・垣見裕司氏)さえある。これでは末端市場が混乱して当然だ。優れた見識を持つ垣見氏は、海上RIMと陸上RIMの価格差が10円も離れたことが、この混乱の元凶だと同社のホームページ(HP)で指摘されている。

 ところで韓国中央日報の伝えるところによれば、『7日(現地時間)、シンガポール現物市場でガソリン(オクタン価92)は52.76ドルで取引された。同日ドバイ原油価格(53.81ドル)より1.05ドル低かった。ガソリン価格が原油の価格に満たない逆転現象が起きているのだ』とし、『ガソリン価格は原油よりバレル当たり10ドル程度高いのが普通』と疑問を呈している。つまり、精製の手間を省いて現物が輸入できれば、市況にマッチしたガソリンの供給が可能になるということだ。だが、優れた精製能力を有する石油元売りは、製油所を遊ばせるワケにはゆかないし、「先物で買った(高い)原油は着々と入荷」する。前述のI氏、「だから、市中で業転玉を仕入てきたホームセンターなどの安値GSが先行し、市況をリードする」。

 系列販売など無視し続けてきた業者が有利だと言うのである。原油価格、FOB、CIFもなどの知識は一切ご無用。RIM価格やTOCOM相場に一喜一憂することもない。市中に出回る安値のガソリンを丹念に集めれば商売になる。市況対応力も優位になる。(系列元売りから仕入れたガソリンを)近隣のGS価格に対応してきた専業GSは勢いを失う。結果は、仕入価格の高低に右往左往し、安値看板におびえ、市場競争力を失ったGSが増えることになる。だが、3回目の石油危機が到来したら、市中玉のみに依存する販売業者はどうなるのか。「安物買いのゼニうしない」ということもあるのだ。

  時々刻々、変化する国際石油市場。中でもわが国のGS業界は、販売価格の乱高下、省エネ車の普及による需要減に加え、自ら招いた過当競争の渦中にある。セルフが増えて、ランニングコストが下がっても、イニシャルコストの建設費や設備費は従来型の約1.5倍。夏は酷暑で冬は厳寒、働き場所としてのGSの雇用条件は厳しい。話を終えたI氏、「いやあ、今日はお客さんが少ないなあ」と天を仰ぐ。億単位の設備投資を回収するのは容易ではない。

 11日、わたしの住む茨城では、茨城交通が民事再生手続きを水戸地裁に申し立て受理された。負債総額は66億円、同社は水戸出身の力士雅山(本名竹内雅人)の実家が関係する企業で、業績不振の理由の一つに、燃料代の高騰が上げられている。ガソリン価格の低下を歓迎する声ばかりが鳴り響く今日、「安定供給、安定価格」の観点から業界全体を見直し、「シーレーン自衛の是非」にまで目を向ける必要がありそうだ。【了】

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