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PJ: 今藤 泰資

メディアが書かない「ガソリン価格決定」のカラクリ(上)
2008年11月12日 06:43 JST


沖縄県より安い茨城県のガソリン。「一物百価」、安値看板は消費者の購買意欲をそそるが…。(桜川市内11日撮影:今藤泰資) 

このところ乱高下するガソリン価格、悲鳴を上げるのは消費者ばかりではない。当のガソリンスタンド(GS)業界が、これまたタイヘンのようだ。石油情報センター11月4日発表の全国平均店頭価格のレギュラーガソリンは141.0円とされていたが、その後続落。11日時点でのガソリン価格比較サイト「gogo.gs」では132.1円である。わたしはメディアが常々頼る「石油情報センターの全国平均店頭価格」を問題視してきた。月に数回発表されるこのデータは、単なる指標に過ぎず、あまりにも実勢価格と乖離(かいり)しているからである。と同時に、ガソリン価格の決定方法は、どのメディアも報道していないことに気がついた。無知なのか、無関心なのか、はたまた恣意(しい)的な要素でもあるのか。

 そんな折、PJニュースの小田編集長からメールが届いた。「今藤さん、石油会社は原油を先物で、為替も先物でヘッジしながら買い付けて、急激な価格変動へのリスク回避をしているのに、なぜ、ガソリン店頭価格は原油と為替のスポットで大きく上下するのですか」と聞いてきたのだ。わたしを石油業界OBと知ってのことだが、瞬間返答に窮した。確かに一物百価だ。販売格差は開き過ぎだし、系列ごとの格差も地域格差も異様だ。わたしのささやかな業界常識など、当節役には立たないのである。どうやら想定外の要素があるらしい。早速、販売大手の販売部長と元売り大手の元広報担当に取材してみた。

 9月12日付PJニュース『乱売続くガソリンスタンドの椿事!「152円」でも客が来ない?』の新設予定GSで、話に応じてくれたのはS社のI取締役部長。88の直営GSを統括する人物である。開口一番、「マッタク参ってます、いや複雑なんですよ、値決めが」と愚痴が出る。変化の兆しは10月からだった。まず慣例であった元売りとの値決めが、「透明性を高めよ」との公正取引委員会の指導によって、月ごとに仕入れ値が変更されるようになった。下がりすぎた原油相場と円高基調では、だれが考えても国内のガソリン市場は格安になって当然だ。全国各地、どこのGSでも同様に安値基調で推移するはずだから、GSによって多少の価格差はあれ、大差がでるハズがない。

 ところがこの日、オープンしたばかりのS社のレギュラーガソリンは131円。数百メートル離れた農協系GSでは125円。その真向かいにある独立系のGSでは122円である。全国指標の141.1円はもとより、信頼に足りるガソリン価格比較サイトでさえ、実勢価格とかけ離れている。新設GSはS社の旗艦店である。どうしてこんな事態になったのか。ステージ登場3社の力量から言えば、伝統とスケールメリットを誇るS社が最安値でなければならない。各社ごとの販売方針が違って当然だとはいえ、格差が大きすぎるではないか。ちなみに11月11日11時更新のgogo.gs「全国安値TOP50GS」には、常連だった沖縄県の、それもたった1件のGSを押しのけて、群馬県の117円を筆頭に、大阪、京都、神奈川、三重、千葉、愛知、徳島など各地の異様な販売価格が報告されている。沖縄県は「復帰特別措置法」によって揮発油税(ガソリン税)が7円低減されているからで、「沖縄より格安のガソリンが続出」など、過去にはなかった異様な現象である。

 わたしの素朴な疑問に応えて、I氏はこう言った。「10月分から元売り(石油メーカー)からの仕入価格を取捨選択せねばならなくなったのです」「元売りの新仕切り体系が実に複雑でしてね。さらに11月からは、RIMとTOCOMを基準に毎週変化するのですから」と眉(まゆ)をしかめる。「新仕切り体系? RIM? TOCOM? 仕入価格を選択?」意外な返答にわたしは驚いた。石炭を駆逐し、2度の石油危機を体験し、製品仕入れも販売にも携わってきたわたしの石油語録にはなかった表現である。さらにRIMには海上RIMと陸上RIMがあって、ここに問題があるというからこの業界、実に複雑怪奇というほかない。【つづく】

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PJ 記者