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PJ: 今藤 泰資

「爆弾と粉ミルクの国アメリカ」を、考えなおす時が来た。
2008年10月13日 06:26 JST


明るく朗らかなアメリカ人だが、奇妙な言動も多いのも彼らの特徴だ。(撮影:今藤泰資) 

ここ数日、立て続けに起こったいくつかの出来事が、矛盾の国アメリカを端的に表現している。わが国は在来政策を踏襲するだけでいいのか、そろそろ日米関係を考え直す時期がきたように思えてならない。

 まずは、アメリカのサブプライムローン問題に端を発し、世界規模に拡大した金融危機だ。公的資金導入を忌避したことによって、国際経済界の不安は増大し、証券大手リーマン・ブラザースの破綻(はたん)を招き、ついには米大手自動車メーカー3社を直撃した。アメリカ政府も米連邦準備制度理事会(FRB)も、現状認識が甘かったのである。世界的恐慌が起こらなかったのは、ヨーロッパやわが国の金融制度が1929年当時に比して確立していたからである。2003年、グリーンスパンが嘲笑(ちょうしょう)したわが国の公的資金導入の正しさを、今ようやく彼らは認めたことになる。

 次は、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除に踏み切ったことだ。声高に「テロとの戦い」を進めていたブッシュ大統領は、わが国の拉致被害者らの家族にも「拉致は現在進行形のテロ」とし、指定理由に拉致を盛り込ませたほどだった。アメリカの方針が微妙に変化したのは、北朝鮮が核保有国と知ったからである。任期の残り少ないブッシュ大統領には、拉致被害者の気持ちなど案じる気持ちはさらさらにない。まさに君子は豹変(ひょうへん)したのである。

 ロス疑惑の渦中の人物、三浦和義元社長の自殺も奇怪な事件だ。米ロサンゼルス市警は10月11日午前9時(日本時間12日午前1時)、市警本部で会見を開いた。「会場に姿を見せた捜査主任のリック・ジャクソン刑事は、前日の身柄移送会見で見せた誇らしげな表情から一転、苦渋の表情を浮かべ、一言も発言しないまま会見場を去った」とメディアは伝える。重要な被疑者を簡単に自殺に追い込んだことになる。この自殺で、責任者が処罰されることはまずあるまい。
 
 アメリカとはそういう国、こんな例はいくらでもある。ソ連の圧制から護(まも)るためと称し、アフガニスタンのタリバンに兵器を提供したのはアメリカであった。今では性能に優れた米国製の「スティンガー(対空小火器)」が、米国空軍の爆撃機を狙っている。世界からみれば矛盾だらけだが、彼ら自身はそれに気がついていないように見える。フランスが手を焼いたベトナムに派兵し、混乱を招きながら、またイラクでも同様の愚行を繰り返す。

 最大の矛盾は、あの9・11事件である。「テロとの戦い」の端緒になったこの事件では、4機の大型旅客機がハイジャックされ、ニューヨークのツインタワービルやワシントンにある国防省本庁舎に突入し、多くの犠牲者を出したが、この事件でアメリカ人が処罰された形跡はない。テロリストの跳躍跋扈(ちょうやく・ばっこ)を許したのはなぜか。

 彼の国には多数の諜報(ちょうほう)機関が存在し、さらに陸・海・空、それに海兵隊という世界最大の軍隊にも、優れた情報収集処理能力がある。それらの網をかいくぐり、世界二十数カ国の死者を出しながら、責任者から謝罪の声は出てこない。建国以来、他国を攻撃する能力には勝っていたが、国防能力は皆無であったということだ。

 第二次世界大戦を経験したわたしたち世代は、雨あられと降ってきた大型爆弾と焼夷(しょうい)弾の恐怖を忘れることはない。民間人とその住まいを狙って攻撃したのは、間違いもなくアメリカ人であったし、戦後直後に進駐してきた米軍兵士はスマートで優しかったのも、また事実である。食糧危機に瀕(ひん)していたわが国の少年少女に、粉ミルクを与え、ノミやシラミの沸いた身体に、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)を振りまいたのもアメリカ兵であった。まさに「マッチポンプ」、火をつけるのも、火を消すのも、同じ国家と国民の行為であった。

 アメリカ政府が好むセリフ、「日本は最大のパートナー」というリップサービスに混乱してはならない。彼らの嫌うわが国独自政策を実践することが、国家百年の計。いついかなる時代でも、外交には、強硬と軟弱、虚実と事実の使いわけが肝要である。手練手管(てれん・てくだ)を使い分ける北朝鮮から学ぶことは多いと知るべき。着々と世界にネットワークを構築中の、反米主義者ウゴチャべス・ベネゼェラ大統領を見習うべきだ。

 ただしわたしは、なんでもかんでもアメリカと聞けば反対したがる反米主義者ではない。彼らの文化も文明もわたしにとっては永遠の夢であり、今もって永住権を得ようと試みてもいる。単に、アメリカ政府やアメリカ人の発想や言動を許そうとは思わないだけなのである。アメリカの傘から離脱し、わが国独自の政策を展開する時期だといいたいのである。さもなくば、利用されるだけの「便利屋国家」、あらゆる国から侮蔑(ぶべつ)されることは必至だ。コガネをため込んだアジアの小国と烙印(らくいん)を押され、未来永劫(えいごう)、強力国家にはなりえないだろう。【了】

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