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PJ: 穂高 健一

日本一の上野動物園!熱意と動物愛で支える人たち
2006年01月06日 06:52 JST


アシカが餌をおねだり。寒風のなかでも素手で1日32?の魚を与える、半沢さん(獣医学部卒、7年目)(撮影:穂高健一) 

寒い冬になれば、北の動物たちの動きは活発になる。豪快にプールに飛び込む白熊、飼育係に甘えて餌をねだってジャンプするアシカ、園内を行進する王様ペンギン(木曜の午後2時半)。それらを楽しみに家族連れや若いグループが多くやってくる。肌のちがう外国人家族も多い。上野動物園の入園者数は約320万人(昨年度)で、日本一である。

 世界的にも規模が大きい上野動物園は514種、2869の動物をかかえる。動物を愛する職員たちで支えられている。飼育係の井田係長から、一般見学者が知らない動物の生態や、職員それぞれの役割などを紹介してもらった。

 パンダや象や熊などがいる東園には飼育係が26人、キリンなど草食動物、両生爬虫類、夜行性動物がいる西園には13名が配属されている。4人から6人の班の編成で世話をしている。トラ舎、アシカ、ペンギン、夜の森はひとつ班で6人が受け持つ。五頭いる象も6人の班が受け持つ。職員は週休二日の勤務シフトだから、実質一日4人くらいで世話をする。

 「職員が泊まり込むのは、貴重な動物が出産しそうなときです。一週間前から泊まり込み、監視モニターなどでチェックしています。その逆で、象が死にそうなときも同じ。動物病院係と連絡を密にし、治療にあたってもらいます」。病院係の獣医はいま4人の体制。治療だけでなく、ほかに大きな仕事としては検疫がある。園外から動物を受け入れる際、動物病院の検疫舎(一般職員すら立ち寄れないところ)で、有害な病気を持つか否かのチェックを行う。水際作戦である。

 動物はどのようにして入手されているのだろうか。井田さんに聞いてみた。「どこの動物園でも、欲しい希少動物がいます。動物園どうしだけだと限界があります。世界的な情報網やバイヤーをかかえた専門業者をも介し、購入したり、等価交換などしています」。あらゆる動物は移動となると、ワシントン条約、文化財保護法、鳥獣保護法など、いろいろな条約や法律の制限を受ける。環境省などの許認可の手続きは庶務課が受け持つ。

 日本から外国に動物が出て行くケースはありますか?
 「わりに少ないです。ヨーロッパの動物園が欲しがるのが、丹頂ヅルです。あちらではめずらしい鳥類のようです」。

 日本では上野動物園だけしかいない動物を教えてくれますか?
 「アイアイ(マダガスカル島の猿)ホカピ(キリンの仲間)、灰色ジェントルキツネザル、マダガストキです。それに絶滅寸前で、小笠原に50羽しかいない赤頭カラスバトです。珍しいところでは東園のジャイアントパンダ、西園にいる出っ歯ネズミ、オカピです」。

 514種ともなると、飼料の調達は大変でしょうね。配合飼料ですか?
 「それが主体になります。他にはわれわれ一般家庭とおなじ、生鮮食品が多くなります。ただ、ここには水族館がないから、貝類の購入はゼロです。納入業者を通してですが、房総の青草、各地の藁とか、干し草とかを仕入れます。生き餌(いきえ)はネズミとウサギです。ネズミは猛禽類の鷲や鷹、それに蛇に与えます。トラやライオンなどの肉食動物にはウサギの生き餌です」。

 ふだん与える馬肉、鶏の頭は冷凍だから、ビタミン類が損なわれる恐れがある。そこで、一週間に一度は生き餌を与える。一方で、週に一度はエサをやらない休餌日(きゅうじび)をつくるという。その理由を聞いてみた。「野生の動物は何日経ってもエサにありつけないときがあります。こういう野性味を残すことが、飼育では大切なことなんです。これも動物愛のひとつです。いつが休餌日かと、動物にサイクルを悟られない配慮も必要です」。

 井田さんは、エサも大変だが、動物園にはプールが多いので、水の調達がコスト削減の面で大変だという。水道ではコストがかかり過ぎ。使用量の半分以上は井戸水を汲み上げていると教えてくれた。夕方5時になると、動物たちがエサにつれられて展示場から動物舎に戻ってくる。飼育係にとって、最も忙しい時間帯となる。と同時に、動物の体調をみる貴重な時間でもある。

 「えさを残す、糞をしない、下痢をしている、動きが少ない、あるいは四脚のどれかを引きずっている。わずかな異常を見抜く。それにはふだんの観察力が大切です」と強調された。類人猿だと鼻水が出たり、咳が出たり、熱っぽい顔になり、人間とまったく同じ症状を表すという。

 動物園内でも、配置転換がありますか?
 「あります。自分が好きだという動物でも、担当になると、動物のほうが嫌うことがあります。吼えたり、檻をたたいたり、攻撃的な態度が一週間も続くと、その人はもうだめですね」。ゴリラ、象、チンパンジーなどはとくに神経質だから、繁殖にも影響するという。

 上野動物園の新たな取り組みを紹介してもらうと、工事課が中心となり、熊舎を建設中だという。いま現在は展示場の上から熊をのぞくだけで、見学者との間に距離がある。「完成すれば、ガラス張りになりますから、ヒグマ、月の輪熊、木登りの上手なマレー熊が目の前で見られます。冬眠の姿もみせます。ぜひ、見に来てください」。

 この季節のお勧めを聞いてみた。「日数は残りわずかですが、干支にちなんで、天然記念物の『川上犬』の子犬がいます(1月9日まで)。それを見逃しても、冬の動物はたくさんいますし。西園の不忍池では渡り鳥の鴨がいまペアをつくるさなか、オスどうしの激しい争奪戦がみられますよ」。

 そちらに出向いてみると、熱く恋を語る水辺の鳥たちが賑やかだった。鳥だけでなく、上野動物園は寒い日でも、若者たちのデートの場所でもある。【了】



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PJ 記者