PJ: 穂高 健一
防災・防犯で悩める東京、私にできることは何か?
2005年12月24日 10:55 JST

東京都災害対策本部室の巨大スクリーンの前で、中学生の作文コンクールの授賞式がおこなわれた (撮影:穂高健一) 
第14回「明日のTOKYO」作文コンクール(主催:東京都福利厚生事業団)の授賞式が22日、東京都庁防災センターでおこなわれた。今年のテーマは「安全で安心な生活のため、私にできること」である。都内137の中学校から応募があった2160編の作品の中から、22人が受賞した。
東京都中学校長会の草野一紀会長(三鷹市市立第一中学校長)は講評で、「私にできること」の、より具体性で優劣を決めたと述べた。最優秀賞の受賞者は番匠舞(筑波大学付属中学二年生)さんである。タイトルはテーマと同じ。「いま住んでいる東京が大好きだ、しかし、今の東京は最高だろうか」と、まず疑問を投げかけている。犯罪の多発、環境問題、人口の集中。これら問題の根幹はひとつところにあるとみる。
小学生のときにアメリカに暮らした番匠さんは、地域社会のつながりの深さに強く感銘した体験から、『クリーン&スマイル』という標語を生み出し、提案している。「街が明るくなれば、明るい空気になり、犯罪者のつけ入る隙がない東京の実現が可能だ」と提唱している。『クリーン&スマイル』は、文学に精通する石原知事がそのまま使ってもおかしくない、わかりやすい良い標語である。
特別賞の澤田理沙(白百合学園中学2年生)さんは、近所で起きた殺人事件の犯罪者が捕まらない現実に不安を持つ。そこから『割れ窓理論』を述べる。一枚のガラスを放置しておけば、一軒の家のみならず、地域が荒廃軽犯罪から重犯罪に進む。こうした事例を論理的に組み立て、地域のミニ犯罪(落書き、ポイ捨て、駐車違反)の排除運動を提唱する。
優秀賞は5人。廣瀬智子(白百合学園中学3年生)さんは個人情報保護法を杞憂(きゆう)する。学校から生徒名簿がなくなり、年賀状を書くにも苦労するという。プライバシー保護が優先されると、地域社会の人々のふれあいが薄くなり、犯罪が増加するだろう、と警鐘を鳴らす。佐々木大輔(お茶の水女子大付属中学3年)さんは、東京がシドニー、シンガポールとともにアルカイダ組織のテロの対象になっている、と新聞のコラムから強い不安に襲われたという。『自分の身は自分で守る、逃げることがとても大切だ』と防犯教室で習った。それではむなしい。1人の人間の逃げる知恵よりも、地域ぐるみの防犯の目が大切だと訴える。
入選は15人である。阿部真由子さんは、食の安全性の問題というユニークな切り口。山田祥平さんは「都市の引き算」というタイトルで、引きつけた。篠崎茜さんは修学旅行で神戸に行き、震災体験者から「地域防災力」という言葉を知ったと述べる。奥村圭さんは杉並の「中学レスキュー隊」の体験から、親や大人に守ってもらう立場から、自分も人の役に立つ、という立場への転換を語る。
審査委員長の草野会長は、『こういうことを考える、中学生がいるのか』と驚きながらも、これら優秀作品が行政への提案にもつながっているとつけ加えた。
受賞式の後、22人の中学生は防災センターの見学会に入った。授賞式会場は8階と9階が吹き抜けの災害対策本部室である。大災害が発生すれば、警視庁・消防庁ヘリコプター、都庁屋上カメラ、移動多重無線車からの情報がリアルタイムで200インチの大型スクリーンに映し出される。実際に災害が起これば、石原都知事が中央に座り、107人のメンバーが協議しながら指令を出す、と説明を受けた。
さらに通信室、指令情報室を回った中学生たちは、各人の作品テーマと合致する面が多いだけに目を光らせていた。受賞作品のいくつかは阪神淡路大震災、新潟中越地震を取り上げ、過去の災害を風化させるなと訴える。他方で、それら災害を東京に当てはめ、行政の立ち遅れを指摘する。
大地震が起これば、東京だけでも371万人の帰宅困難者が出ると予想されている。災害はいつ起こっても不思議ではない。「明日はわが身である」。中学生の作品集から、学ぶことが多い。
■参考情報
東京都福祉厚生事業団
第14回「明日のTOKYO」作文コンクール優秀作品集
発行 財団法人東京都福利厚生事業団 03(5320)7448

