SakuraFinancialNews

PJ: 穂高 健一

秋の旅路、瀬戸内沿岸の歴史を訪ねて(8)=御手洗・広島県
2011年11月08日 09:02 JST


大崎下島の御手洗は、幕末まで瀬戸内で最も発達した港町のひとつ。勤王側、幕府側を問わず、歴史上の人物が数多く上陸している。(撮影:穂高健一、10年12月22日、広島県) 

【PJニュース 2011年11月8日】幕末の歴史好きならば、一度は訪ねてみる価値があるのが大崎下島(広島県)の御手洗(みたらい)である。幕末まで、「御手洗航路」と呼ばれ、「風待ち、潮街として」の港として栄えてきた。穀物取引で御手洗相場が立つほど、西日本の交易の中継点だった。

幕府側、勤王側を問わず、船便を利用する旅人が上陸し、遊郭などを情報交換の場としていた。これら遊郭街の建物を中心として、1994(平成6)年には、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。(全国で38番目)。

文久3(1863)年8月18日、公武合体派の薩摩と会津が謀ったクーデターで、三条実美ら攘夷過激派の公卿7人と、尊王攘夷をとなえる長州藩が京都を追われた。世にいう「七卿の都落ち」である。七卿たちは海路で長州に向かった。鞆の浦(福山市)、御手洗(呉市)などには、宿泊した家屋が現存している。

「七卿の都落ち」から幕末の歴史が大きく動きはじめた。禁門の変、長州征伐(幕長戦争)、薩長同盟、大政奉還、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争による会津落城へとつづいていく。まさに激動の時代に突入した。

御手洗に坂本龍馬も立ち寄った、と現地では伝えられてきた。龍馬の研究者たちは「龍馬が御手洗に上陸した史実はない」としてきた。司馬史観などでも、龍馬と御手洗の記述に及んでいない。

龍馬は届いた手紙すべてを破棄していた。それだけに御手洗に関する、物証はなかった。(唯一残るのが、木戸 孝允に送り戻した、薩長同盟の裏書をした手紙だけである)。

龍馬は蒸気船の船将(船乗り)で、長崎から関西まで何度も行き来している。瀬戸内の重要な港である御手洗に立ち寄らないはずがない。鳥取藩士・河田佐久馬の日記(備行ミちの記)によると、いろは丸事件の後、長崎に向かう龍馬が御手洗に上陸しており、ふたりは声をかわしているのだ。

龍馬たち志士は京都、鹿児島、長崎、下関などが、かれらの活動拠点だと見なされてきた。はたしてそうだろうか。幕府側からつねに命を狙われる志士たちが、取り締まりの厳しい主要都市で密議をするだろうか。(池田屋では新選組に襲われている、苦い経験がある)。極秘裏に会える、アジトが別にあったと考えるべきだろう。

最近見つかった、新谷道太郎述書『維新志士 新谷翁の話』(昭和11年6月18日発行)によると、慶応3年3月18日、土佐の坂本龍馬、薩摩の大久保市造、芸州の船越衛、長州の木戸準一郎が、新谷の生家(御手洗港から約1.5キロ奥まった寺)にやってきて、四藩軍事同盟の根回しの会談をおこなった、と記されている。

新谷は御手洗出身で、かつて江戸の勝海舟に弟子入りし、龍馬とは顔なじみだった。龍馬から、御手洗に帰省していた新谷に、「密議の場」として借りたいと申し出ている。朝敵とされた長州藩も京都と違って御手洗ならば、隠密裏に出むける。芸州藩も倒幕に加わっているし、幕吏の目からも届きにくい。龍馬にとって、御手洗が最良の密議の場だったのだろう。

当然ながら、龍馬は極秘の場所を手紙など書面で残すはずがない。

新谷の同書によると、慶応3年11月6日、薩長土芸の4藩から十数人の志士たちが集まり、3日間の密議を行っている。(龍馬暗殺の9日前)。
10月14日に大政奉還が行われた。新政府はまだ樹立できておらず、徳川慶喜・会津など幕府側の巻き返しが懸念されていた。
龍馬主導で、京の御所を固めるために、薩長土芸の4藩から武器と兵士と兵糧米を差し向ける、と決めたのだ。

同書によると、御手洗の四藩密議の参加者として、
薩州藩、大久保一蔵(利通)、大山格之助、山田市之丞
長州藩、桂準一郎(木戸 孝允)、大村益次郎、山縣狂介(有朋)
土州藩、坂本龍馬、後藤象二郎
芸州藩、池田徳太郎、加藤嘉一、高橋大義、船越洋之助、星野文平
という名前が挙がっている。

長州藩と芸州藩が、11月26日に御手洗条約を結び、武器と兵を積んだ船を出航させている。これが鳥羽伏見の戦いにつながっている。
『維新志士 新谷翁の話』は従来の史観とは違う。その信憑性についてはそれぞれ見方や意見もあるだろう。幕末の重大な密議が行われた場所か否か。御手洗を歩いて検証をしてみるのもよいだろう。【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド

PJニュースは一般市民からパブリック・ジャーナリスト(PJ:市民記者)を募り、市民主体型のジャーナリズムを目指すパブリック・メディアです。身近な話題から政治論議までニュースやオピニオンを幅広く提供しています。

PJ募集中!みなさんもPJに登録して身の丈にあったニュースや多くの人に伝えたいオピニオンをパブリックに伝えてみませんか。



関連記事:
タグ:
pagetop

PJ 記者