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PJ: 穂高 健一

「やまとうた」の美しさを観て、楽しもう=東京(下)
2009年11月27日 07:00 JST


重要文化財「素性集 紙色本」 筆者不詳 平安時代中期=藤原定家が手元に置いて参照した本。歌を添削する記号をつけたり、絢爛たる料紙に惜しげもなく書き込みをしている。(写真提供:主催者) 

【PJニュース 2009年11月27日】(中)からのつづき。和歌は、日本人の美意識の源でもある。能、絵画、茶道に影響を与えてきた。東京都美術館で開催されている、「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」では、日本人のもつ「和」の美しさが存分に堪能できる。

同家は長年、多くの私家集(しかしゅう)を保存してきたことでも有名である。私家集とはなにか。勅撰集が天皇の命で多くの歌人の優れた歌だけを集めたものに対して、一人ひとりの歌を集め、別々に編纂(へんさん)した、個人別の作品集のことである。

藤原定家は、私家集を精力的に書き写していたという。同展では、それら私家集がずらり並ぶ。万葉時代の柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)、山部赤人(やまべのあかひと)、古今時代からの紀貫之(きのつらゆき)、在原業平(ありわらのなりひら)、遍照(へんじょう)、小野小町(おののこまち)など。

和歌に縁がない一般人でも、『六歌仙』(ろっかせん)と呼ばれた歌人に接すれば、学生時代に習ったな、というていどの記憶がよみがえってくるだろう。

同展は、絵画史の観点から『美』を見つめることができる。「平安装飾本」、「鎌倉装飾本」など、ぜいたくな美本が数多く展示されている。

製紙技術が大陸(中国)から伝来したのは西暦610年だと言われている。紙は長きにわたり、高価なもので、僧侶の写経、公家の和歌など特権階級、文化人のものだった。それだけに、紙は日本の文化に大きく寄与してきた。

平安時代には美術和紙工芸が発達した。和歌に使われる料紙には、金銀や雲母の砂子などを美しく散らしたもの、雲紙、飛雲を漉(す)き込んだものがつかわれている。中国から輸入した文様や図案が雲母で擦り込まれている。

料紙は実に多彩だ。銀泥で鳥、蝶、折枝などを下絵として描いたもの。黄、紺、藍、茶、紫の色紙に、金・銀の切箔を散らすもの。平安王朝の豪華さが次々に迫ってくる。

平安時代には、日本独特の技法も発達した。「破り継ぎ」は、紙をちぎって別の紙にのり付けするもの。重ね継ぎ」は十二単の袖口ように、少しずつずらしながら重ね合わせたものだ。

勅撰集、私家集など展示物は、いずれも流麗な筆文字である。現代書家たちの教本ともなる、屈指の名筆が数々ならんでいる。達筆な文字が読めず、歌の内容が理解できないけれど、これら豪華な文化財をながめるだけでも、十二分に堪能できる。

「鎌倉装飾本」となると、表紙に多くの装飾料紙を用いたもの、銀泥でデザインされた派手なもの、金泥で罫線(けいせん)を描いた、大ぶりの武家風のものが目立つ。図柄も多彩だ。一軒家に草木を配置したもの。水鳥や、萩や桔梗など秋の草花、梅鉢、桜花の文様など、観るほどに魅せられていく。美術史的にも貴重なものが多いという。

同展では、冷泉家の旧暦7月7日の行事『乞巧奠』(きっこうてん)などがビジュアルに展開されている。公家の情感が伝わってくるものだ。

東京都美術館「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」に、まずは身を置いてみよう。和歌・短歌に疎くとも、美術工芸品を観る、という気持ちだけでも良い。世界に誇れる、平安・鎌倉期からの「美しい日本」の文化的財産が再認識できるはずだ。

冷泉家の方々は大変だろうが、後の世まで、日本の美しき文化財を継承して欲しいと切に願う。【了】

■関連情報
東京都美術館

記者HP:穂高健一ワールド

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