PJ: 穂高 健一
夜行日帰りでも、北アルプス登山ができる。快晴の絶景で、満喫する=燕岳
2009年10月19日 06:58 JST
表銀座の稜線に出ると、全方位の北アルプスの山岳が目に飛び込む。豪華なパノラマに魅了される。(撮影:穂高健一、10月15日、長野県) 
【PJニュース 2009年10月19日】首都圏から朝立ちの日帰り登山となると、奥多摩、丹沢、大菩薩、日光連山など、山は限られてくる。夜行日帰りだと、北アルプスでも登れる名峰がいくつかある。そのひとつが燕岳(2762)だ。急登つづきだが、北アルプス入門の山としても知られ、人気もある。
PJ小田さんと2人で、14日夜に、東京を発った。夜半、中房温泉に着く直前、ヘッドライトが照らし出す前方に、熊が飛びだし、こちらの車におどろき、慌ててヤブのなかに逃げこんだ。一瞬の光景だったが、数十年の登山歴で、初めて野生の熊をみた。
中房温泉に着くと、駐車場にテントを張る。
翌15日は夜明け前から満天の星で、快晴の快適な登山が予測できた。朝食をとり、6時に出発した。朝日に映える紅葉の山道を登っていく。まさに登り一辺倒だ。第一ベンチ、第二ベンチ、そして富士見ベンチ、と区切りよく、休憩場所がある。山梨方面は靄(もや)が出ており、富士山は見えなかった。
この間、山をよく知る70歳くらいの夫婦と、20代の若者ふたりと、前後して登った。若者は勢いに任せた、速い登り方だ。このルートは北アルプス三大急登の一つ。若者たちはやがてオーバーペースから速度が鈍り、合戦小屋に着くころはバテ気味だった。
登山は不思議なもので、前後して歩くうちに、どこか親しみを持つもの。3組が軽い会話を交わし、周辺の山々を語り合った。
合戦小屋から約15分で、合戦沢の頭(2489)にまでやってきた。大天井岳(2921)への稜線が鮮明に見えてきた。その向こうに、三角錐の切り立った、槍ヶ岳(3180)が顔をのぞかせている。「おれたちは北アルプスにやってきた」という感慨を与えてくれた。
進む前方には、燕山荘が見える。やや右手には、美しい砂礫岩の燕岳が青空の下で、屹立する。眼下をみれば、山間の紅葉だ。美観つづきだけに、登り一辺倒でも、疲れた身体に鞭が打てる。
表銀座の稜線に出たとたんに、全方位の北アルプスの山岳が目に飛び込む。豪華なパノラマだけに、胸を打つ。美しさに魅了されながら、一つひとつ見ていけば、槍ヶ岳への表銀座の東鎌尾根、けわしい北鎌尾根、さらには穂高連峰が連なる。
視線を真正面にむければ、裏銀座縦走コース(烏帽子岳―槍ヶ岳)が西鎌尾根につづく。中間地点の水晶岳にはわずかだが、白い新雪が確認できた。はるか彼方には立山連峰が連座する。名峰ばかりの絶景だから、中房温泉からの4時間半の疲れを一気に吹き飛ばしてくれる。
燕山荘の広場には登山者たちがやってくる。デジカメで写真撮り、地図を出して遠景、近景の山岳名を確かめ合う。たっぷり休憩したあと、燕岳山頂にむかう。
なだらかな快い稜線歩きだ。白い砂礫と、奇岩と、緑のハイマツ、それに周辺の山々が彩りを添えてくれる。谷間から雲が上がってくるが、燕岳の山頂は隠れることもない。三角点に到着すると、PJふたりはここでもゆっくり全方位の美観を楽しむ。
小さなピークを登り下りして北燕岳に着く。稜線の景観はほぼここまで。あとは東沢乗越(2253)を経由する中房温泉への下山ルートを取るのみ。前方の餓鬼岳が、わき上がる白い雲と絡み合い、神秘な情景を作っていた。
地図で西大ホラ沢出合、ブナ平とポイントを確認しながら、急な下り勾配の道をいく。折々に紅葉に目を奪われて、カメラを取り出す。
中房川の右岸、左岸と何度も渡る。川のなかの石を飛び石にする。木製の橋が苔(こけ)むして壊れ、スリル満点の場所もある。雨の日だったら、怖いだろうな、と思えるルートだ。
やがて鉄パイプの吊橋で、そこからは安全な道だった。日帰り温泉のメッカである中房温泉に着くと、紅葉が真っ盛り。露天風呂は700円。ひと風呂浴びながら、心地よかった登山をゆっくり振り返る。
無積雪期ならば、夜行日帰りでも、北アルプス登山が楽しめる山岳はいくつかある。ただ、10月下旬ともなれば、山々に雪が降りはじめる。特に低気圧の通過が予測されると、健脚者でも、日帰りは危険だ。
今年はムリでも、来年の夏場には夜行日帰り登山を計画すれば、山の楽しみ方の幅が広がるだろう。【了】
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記者HP:穂高健一ワールド
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