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PJ: 穂高 健一

報道写真から、世界が見える、人間がわかる、将来が読める(5)
2009年07月10日 05:17 JST


悲惨な戦争、自然災害、貧困、病苦ばかりでなく、ユニークで、楽しめる写真も多い。(撮影:滝アヤ、東京、6月23日) 

【PJニュース 2009年7月10日】(4)からのつづき。「世界報道写真展2009」は従来と色合いが少し違う。悲惨な戦争、自然災害、貧困、病苦ばかりでなく、ユニークで、楽しめる写真が多くなった。

スポーツでは競技の勝敗の一瞬を伝えるだけでなく、組写真などで観る人の目を引きつけている。4人のボクサーの顔写真が並ぶ。戦いの前と、戦った後。おもしろいアイデアだと思う。戦う前の顔は緊張と勝利への執念がみなぎる。戦い終わると、瞼(まぶた)や唇は傷ついた痛々しい顔だが、どこかこれで終わったという安堵(あんど)の表情がある。人間の心が写されている、ともいえる。

三段跳びの予選の写真。それは勝者でなく、2センチの差で予選敗退した選手だ。砂場に着地した瞬間が、高速度シャッターでとらえている。砂が高く舞い上がり、砂が網目のようなベールとなり、選手の全身が隠れている。観る目が引き寄せられてしまう。

水泳の高飛び込み。組写真として、4人の選手が空中で、おなじ角度、おなじ高さでとらえている。一人ひとりが、全身が筋肉の一本ずつまでもとらえられている。筋肉美の極致(きょくち)をとらえている。緊張した顔の目、鼻、口など極度な表現が微細(びさい)なところまで写し出されている。これはTVのスローモーションでは感じられない、スチール写真の妙だといえる。

スポーツ以外でも、組写真による対比の面白さが目立った。ポーランドの海岸の海水浴場をおなじ上空から、寸部も違わないおなじ角度、おなじ位置から、太陽の違う時間帯ごとに追っている。それぞれ海水浴客の人数の違いによる、ビーチの表情が違う。
大勢の海水浴客とすき間のないパラソル群だ。太陽が傾くほどに、混雑が緩和されていく。夕方の砂浜となると、人影はまばらで、わずかなパラソルがその影を細く針のように長く伸ばしている。人間の行動には均一性があると、読み取れる。

中国の観光地・西湖の湖畔が6枚の組写真で並ぶ。シンプルな構造で、一本の樹木、2つのベンチがあるのみ。そこに舞台役者のように人間が現れる。と同時に、4シーズンの表情をとらえている。

一本の樹木は若葉、青葉、落ち葉、枯れ木、と変化している。二つのベンチには、男女のカップルが二組して座る。夏にはそれぞれ日傘をさした二組。秋には老夫婦らしき観光客。積雪のときには団体観光客がやってきた。一年間にわたり根気よく撮りつづけてきた、アイデア勝ちの組写真だ。

自然のなかで撮影された貴重な写真が選ばれている。インド・ヒマラヤのラダックで、ユキヒョウが撮影されている。遠隔操作のカメラを据えつけてとらえたもの。5か月間に、一枚しか、ユキヒョウが写っていなかったという。

同展は優秀な作品が約200点ならぶ。時間を忘れて、一枚ずつ丹念に見るほどに、写真には奥の深い意味合いと、「人間」の隠された内心までも浮かび上がってくる。
来館者には外国人の姿も多い。8月9日(日)まで開催されている。一度は同展に足を運んでもらいたいものだ。そこには必ず感動と、共鳴できる写真がある。と同時に、世界の出来事を見つめるなかで、数多くの発見があるだろう。【了】

■関連情報
記者HP:穂高健一ワールド

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問い合わせ情報欄:

東京都写真美術館
会 期: 8月9日(日)まで
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■料 金:一般 700(560)円/学生 600(480)円/中高生・65歳以上 400(320)円



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