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PJ: 穂高 健一

報道写真から、世界が見える、人間がわかる、将来が読める(3)
2009年07月08日 07:51 JST


「世界報道写真展2009」のテーマは「すべて地球でおきている」である。ジャーナリストたちはその瞬間を切り取って行く。(撮影:滝アヤ、東京、6月23日) 

【PJニュース 2009年7月8日】(2)からのつづき。「世界報道写真展2009」には、悲惨な戦争現場の写真が数多くならぶ。戦争とは国境、宗教、イデオロギーの違いから、人間どうしが憎しみ、敵意を抱き、あげくの果てには血を流す殺し合いに発展していくものだ。戦争による犠牲者の多くは、一般市民の女と子どもである。

兵器開発はいまや高性能化し、大殺戮(だいさつりく)が可能となり、悲惨な状況を生み出している。現代の戦争の特徴は、戦った結果として勝利国、敗戦国となるのでなく、停戦とか、和平協定とかで終結している。戦いの後に残ったものは、廃墟(はいきょ)の街や住居、肉親を失った人の心の傷、死の恐怖の連続による精神障害、特殊兵器による病的な後遺症などである。

グルジア軍と南オセチア分離独立勢力の間に、武力紛争が勃発(ぼっぱつ)した。それを伝える組写真は痛ましい。民衆は両手で顔を覆って泣き叫ぶ。ロシア軍の介入で、住民は家を捨て、眠る赤子を抱え、車で避難していく。婦人がバスの中でハンカチを当てて泣いている。

空爆でつぶれたアパートが黒煙を上げる。死んだ弟を抱えて泣き叫ぶ兄。地面に転がる死体をぼう然と見守る、老夫婦は静かな姿だけに、かえって強烈だ。若い兵士が戦車の側で、戦いに疲れた、将来を見失ったような表情で突っ立っている。戦いに刈りだされた兵士も犠牲者なのだ。

オリーブの木の周りが白煙に包まれている。イスラエル軍の催眠ガスから逃れるために、パレスチナ人たちは木陰に隠れている。

戦争の報道写真一つひとつから、痛々しさが伝わってくる。わが身をそれら各戦地に置いて写真を見つめていると、恐ろしさがわき上がる。人間はなぜ人を殺してまでも、宗教や国境、イデオロギーにこだわるのか、という疑問につながっていく。

「戦わず、もっと知恵を出し、話し合って解決できないの?」と考えていくほどに、「人間とは何か」、という点に突き当たる。

「ニュースの中の人びと」の部、単写真1位が、日本人カメラマンの千葉康由で、ケニア西部の部族間の戦いをとらえている。遊牧民の戦いで、傾斜地の草原に大勢が弓矢を持って、敵地に迫っている。写真で見るかぎり、古来の戦いだ。日本が源平の戦いのころ、源氏と平家の武士がそれぞれ名乗ってから、刀を合わせたという。それを想像させるものがある。

この遊牧民の戦いでは、08年1月から2月にかけて約20人の死者が出ている、と説明がある。先進国の戦いから見れば、のどかな戦争かもしれない。しかし、人間が殺し合う戦いには変わりない。

同展の戦争写真から、犠牲者の悲しみは強烈に伝わってくる。唯一見えないものがある。『戦争とはだれかが利益を得ている』という側面がある。戦争を喜ぶ醜い人たちがいる。ジャーナリストたちが報道写真として、それを上手に捉えて伝えられたならば、戦争の抑止につながると思う。【つづく】

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記者HP:穂高健一ワールド
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東京都写真美術館
会 期: 8月9日(日)まで
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■料 金:一般 700(560)円/学生 600(480)円/中高生・65歳以上 400(320)円



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