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PJ: 穂高 健一

設計偽装か、無規格品か。民間マンションに多いひび割れ
2005年12月13日 06:35 JST

耐震強度偽装問題は、一級建築士やゼネコン、建設会社の責任追及にとどめるべきではない。設計の偽装は論外だが、マンションやビルなどの建築物には、鉄鋼業界や生コン業界といった業界ぐるみの恐るべき隠蔽(いんぺい)体質の実態が隠されている。PJが長年、これらの業界で垣間見てきたその実態を紹介しよう。

設計偽装問題だけでなく、建築素材にも注目せよ
 コンクリートは圧縮に強いが、曲げや引っ張りには弱い。そこで、弱い引っ張りを補強するのが異形棒鋼(通称・鉄筋)である。鉄は日本工業規格(JIS)で、形状(直径)、化学成分、引っ張り強さや降伏点などの機械的性質が規定されている。本来ならば、すべての鉄筋は検査に合格したものであるべきだ。

 しかし現実はというと、必ずしも検査に合格した鉄筋が使われているわけではない。コスト削減をめざす建設会社・ゼネコン側が、安価な鉄筋が求めてくるので、中小鉄鋼メーカーは仕方なく、直径が基準値よりも一割も二割も下回った製品を作り提供してきた。それらは「ムキ(無規格)」と呼ばれる。規格品と比べ、かなり割安に販売されている。

公共建築物にひび割れがないのはなぜか
 『公共の建物はひび割れがない。民間のマンションやビルにはひび割れが目立つ』。読者の皆さんの中に、このことにお気づきの方も多いだろう。その理由は、建設会社が民間の建物ならば、無規格の鉄筋と、粗悪な生コンを使うことがあるからである。官公庁の建造物は規格品。発覚すれば、入札停止になる。建築行政は、鉄鋼と生コン双方の業界に遠慮し、それらを黙認してきた。

 今回偽装設計で問題になった規模のマンションには、通常9ミリ、13ミリの鉄筋が帯鉄筋(フープ筋)として使われている。着衣にたとえれば、基礎や梁の16ミリから32ミリの鉄筋が上着やズボンであり、それらを補強する9ミリから13ミリが腰ベルトである。これらが粗悪品だと、巨大地震がくれば、コンクリート内部のフープ筋が破断し、強度を失い、倒壊する。阪神大地震がそれを証明していた。しかしながら、関東大地震が叫ばれる東京・横浜近郊ではこの経験が生かされていないことが少なくない。

コストか、安全か。現場でのモラル低下も
 建設会社の現場所長は、技術面の管理よりも、収益管理に関心が高い。つまり、コストダウンに血眼になるのだ。粗悪品の「ムキ」鉄筋を購入してしまうケースもある。また、鉄筋加工業者には『鉄筋を減らしてくれ』と間引きを指示する場合もある。さらには、生コン業者には水の比率が高い、安価でもろいコンクリートを納入させる時もある。

バブル崩壊から、大手から中小ゼネコン・建設会社の赤字体質が続き、そして次々に倒産した。会社が消える前には徹底した赤字対策としてのコストダウンが行われ、とてつもなく粗悪な鉄筋が使われてきたことをPJはこの目で見てきた。こうした業者が施工した民間マンションとなると、すべて規格品の鉄筋だけを使った建築物を探すほうが難しい。

粗悪な建築素材は実在する
 この際、ひび割れの出ているマンションやビルは、総点検が必要である。粗悪品を製造してきた弱小の鉄鋼メーカーは次第に淘汰されてきた。しかし、いまだに8ミリの線材コイルを引き伸ばし9ミリとして、また12ミリのものを13ミリとして、『規格外品』として圧延し、流通している実態がある。

 そのうえ、東南アジアのメーカーの中には、日本市場に粗悪な鉄筋の売り込みの機会を狙っているのもある。粗悪品と分かっていながら、需要があれば、輸入する業者が出てくる。

取り壊すビルの徹底検証を!設計だけでなく建築素材に問題も
 耐震強度偽装問題では、国や自治体が公費をつかったマンションなどの解体工事を行うのだという。『はやく取り壊さないと通行人とか、近隣の住民が危険だ』という巨大な粗大ごみの処分気分では困る。構造計算の設計強度に欠けた危険度の高いマンション。そのうえ、粗悪な鉄筋や品質の悪いコンクリートが使われていると、推量できる。

 国土交通省は、マンションやビジネスホテルの一つずつの解体に対して、殺人事件の現場検証をするように、丁寧にデータを取り、解析した結果を公表する必要がある。それが民間の建築物へのチェック、国民の安全という建築行政への改善につながる。

「安物買いの銭失い」に注意!
 一般消費者は、「安物買いの銭失い」という格言を肝に銘じておく必要がある。安ければ、どこかにしわ寄せがくるものだ。物にはかならず販売適正価格があるし、必要最小限の原価・コストがある。丁寧に作れば当然、人件費もかかる。それを無視して安物に飛びつくと、怖い目に遭うのだ。【了】



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PJ 記者