PJ: 宮下 隆二
それでも、中国が北朝鮮をかばう理由
2009年06月18日 14:59 JST
北朝鮮の暴走が止まらない。今年の4月5日にミサイル発射を行うと、国連安保理の非難声明を嘲笑(あざわら)うかのように、5月25日には2006年以来となる通算2回目の核実験を強行し、成功したと発表した。安保理は今月13日に、議長声明より一歩進んだ非難決議を全会一致で採択した。ただ、これらの決議にも関わらず事態は進展していない。オバマ政権も静観の構えのようだ。国際社会のこれだけの非難にもかかわらず、制裁が実効をあげない理由はただ一つ、中国が北朝鮮の崩壊を望んでいないからである。
大韓貿易投資振興公社が先月明らかにした所によると、北朝鮮の昨年の貿易規模は38億2000万ドルとなり、1990年以降では最大となった。このうち、対中依存率は73%である。2003年には32.7%だったというから、この数年で急増していることが分かる。中国への輸出は7億5000万ドル、輸入は20億3000万ドルで赤字だが、これは実質的には援助と捉(とら)えていいのではないだろうか。日本やアメリカは過去に実施した経済制裁のために、北との貿易額はゼロに近い。その分を中国が肩代わりしていることになる。つまり、これ以上いくら経済制裁を行っても、中国が北朝鮮経済を支えている以上、何の効果も望めないのである。逆に言えば、中国が北朝鮮を切る決断さえすれば、経済的にはもはや国家として存続出来ない所まで来ていると言っていいだろう。
ではいったい、なぜ中国はそこまでして、北朝鮮を支えるのだろうか? 一般的には、朝鮮戦争(1950〜1953)を共に戦い抜いた、血の絆(きずな)が指摘されている。この戦争は、朝鮮半島統一を目指す金日成の奇襲によって始まった。当初、北朝鮮軍は連戦連勝で、韓国軍を釜山周辺に追い詰めたが、米軍の本格参戦によって形勢は逆転する。仁川上陸作戦をきっかけに、マッカーサー率いる国連軍はソウルを奪回、平壌を攻略し、中国との国境である鴨緑江付近まで兵を進めた。ところが、いよいよ韓国による統一間近というところで、中国が本格介入し、一説には100万人規模と言われる兵力を動員した。これによって国連軍は押し戻され、結局、元の国境である38度線付近で休戦が成立したのである。
この時の中国の参戦の理由は、地図を見れば明白だ。もし朝鮮半島が韓国によって統一され、そこに米軍が駐留した場合、自国の安全保障が危機にさらされるからだ。北朝鮮と中国東北部は、数百キロにわたって国境を接している。ここの備えを完全にするには、厖大(ぼうだい)な兵力が必要だ。また平壌と北京は、直線距離で800キロ程度しか離れていない。日本で言えば、東京・広島間くらいだ。この距離に米軍基地が存在するということは、首都が常に戦略爆撃機の脅威にさらされているということである。また歴史的に見ても、日本が朝鮮半島を併合したことで、満州(現中国東北部)も明け渡さざるを得なくなり、それによってさらに中国本土への侵略を許したという事実がある。
つまり中国の立場からすれば、朝鮮半島が米韓主導で統一されることは避けねばならず、軍事的緩衝地帯としての北朝鮮の存在は必要なのである。この構図は基本的には現在も変わっていない。北朝鮮が核実験を強行したことにより、中国もメンツを潰(つぶ)されたと感じているようだが、それでも金正日政権を潰すにはデメリットが大きいのだ。
ではどうすればいいのだろうか?やはり解決策は、朝鮮半島全体の安全保障体制の構築という観点から、議論を進めることにしか見いだせないだろう。その焦点は、ズバリ朝鮮半島の非核化である。要するに、米韓主導で朝鮮半島統一が成ったとしても、中国の脅威にはならないということを、明確にする必要があるということだ。平和で安全な朝鮮半島の存在は、日本の国益とも合致する。一見勇ましい先制攻撃論などではなく、長期的なビジョンに立って、この問題を解決していく姿勢を政府に望みたい。【了】(宮下隆二・神奈川県)
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