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PJ: 崎山 勝功

倒産の“質の変化”を読む=帝国データバンク(上)
2006年12月04日 08:35 JST

内閣府の11月月例経済報告で、2002年2月からはじまった景気拡大は、58カ月連続となり、高度経済成長期の「いざなぎ景気」の57カ月を超えて戦後最高になった。 ただし、「個人消費が横ばいで推移していることは無視できない。企業、個人、外需のバランスのとれたこれまでの回復がやや崩れた」ともしている。

 そこには、足元のおぼつかない景気拡大観測がある。街角では、「景気が浮揚しているというけれど、上昇と言うほどの高さがない。だから、実感がない」と大田区の町工場の社長は嘆く。地域の会計事務所は「どこの中小企業も、利幅の薄い仕事をしているようです」と語る。それにも拘わらず、この景気拡大観測を真っ向から否定するムードがない。その理由として思い当たるのは、このところの大型倒産の話題の減少にあるのではないのだろうか。倒産には不況のイメージが付き纏う。とすれば、倒産がないのは景気が良いということになる。たしかに、倒産は減っていたのである。

帝国データバンク「最近の企業倒産の動向と今後の見通し」
 「企業倒産数の動向は、02年(1月〜12月)が1万9458件で、84年(2万841件)に次ぐ、戦後2番目のワースト記録。これは、バブル崩壊後では01年(1万9441件)を抜いて、最悪でした。3年連続の1万9000件超えで、負債総額は13兆7556億7800万円で、戦後5番目です」と、データでそれを裏付けるのは、(株)帝国データバンク東京支社情報部情報取材課・中森貴和課長である。これは、10月下旬、独立行政法人・中小企業基盤整備機構(東京都港区)が、中小企業の経営者向けに、経営環境のリスクを把握できるようにと、企画したセミナー「最近の企業倒産の動向と今後の見通し」で示されたもの。

戦後2番目の倒産ラッシュ、ドン底から始動した景気拡大
 それによると、倒産数の減少が観察されたのは、02年5月からで、1696件(前年同月比1.6%減)と同年初の前年同月比で減少に転じている。まさに、ドン底からの景気拡大の出発点と同期するのである。それからの倒産数は、03年度には戦後13番目、04年度は、1万3837件、前年を16.8%下回った。これは94年以来、10年ぶりの1万4000件割れとなり、戦後24番目というレベルの倒産数まで減少した。これを負債総額で見ると、7兆9273億6200万円で前年比32.6%の大幅減、8年ぶりの10兆円割れとなった。

 2002年といえば9月に、小泉首相が柳沢金融担当を更迭。「市場のことは市場にませるとは、平時のこと。市場を正常にするためには、国家・政府が一体となって対応する」と言明。竹中金融担当大臣による「竹中プラン」で、ハードランディング路線が打ち出されたとの観測から、株価一時8200円割れ、銀行国有化、大型破綻ラッシュの懸念で不安感が広がった。すると、10月末には、不良債権処理を加速する「金融再生プログラム」が発表され、ハードランディング路線を回避するものの、査定強化を通じて公的資金注入への道筋が示された。ここが、いわゆる金融の潮目が変わる時期にさしかかっていたのであった。03年5月、りそな銀行、11月には足利銀行と、実質国有化政策を打ち出し、信用不安の流れを変えた。

倒産減少の要因=企業の手形減少と政府の公的融資の救済策
 ここまで倒産が減った要因は、企業のデフォルト回避行動が強まり、取引枠の縮小、信用収縮をはかり、手形を切らなくなったこと(前年比で、手形交換枚数2割減、交換高も2〜3割減。銀行の手形交換拒否など)。手形を使用しない商習慣も定着し、売り上げが減っても倒産しない体制への強化。同時に、政府の公的融資による救済策強化がある。制度融資、資金繰り円滑化借換保証制度、セーフネット保証・貸付、事業再生支援など倒産回避のための仕組みが相次いで打たれたことなどによる。

 それでも、しかし、倒産がこの調子でどんどん減って来たのかというと、そうではない。05年5月は、614件で前月比横ばい、負債総額は5844億2600万円と前月比72.9%の大幅増となっている。6月は794件と前月比29.3%、180件の大幅増加を記録。その後も一進一退が続く。トレンドとしては倒産件数のベースラインは増加基調に転換とも見えるが、負債総額はさらに低水準。小型倒産が増えたということになる。2005年度の倒産(法的整理)は、件数8759件、負債総額5兆7494億4100万円。件数は、四半期ベースではゆるやかな増加傾向をたどっている。一方、大型倒産の沈静化によって、負債総額は5兆円台にとどまっている。

倒産の質の変化で、信用リスクが潜在化
 中森情報取材課長は、「昨年春以降、倒産に変化の兆しがあり、倒産下げ止まりか、と思わせる沈静化は続いているものの、わずかながら増加トレンドへ流れを変えた。状況によっては、景気回復時における倒産のパターンが出る可能性も……」と、信用リスクの潜在化を警告すると同時に、これまでの倒産パターンを分析、今後の動向を予測している。【つづく】

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